マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本セクター

イギリス管区での宣教体験

2014年7月、初めてスコットランドのアバディーン飛行場に降り立った。夏なのに空気の澄んだ冷たい空気が私の肺の中を一杯に満たしてくれたことを懐かしく思い出す。前年の12月からロンドンの共同体に7か月滞在し、イングランドとアイルランドの共同体を訪問し、これから生活する管区の中のシスター達と出会った。

本場の英語という環境で自分の英語力が試された時で、しどろもどろで話していた自分に愛想をつかしていた。何年英語を勉強すれば人々とスムーズに会話ができるのか。本当に情けなくなっていた。私の最初のミッションはアバディーン州のエロンという小さな町だった。北海油田で働いている技術者がかなり住む町で、イギリスからも人々が働きに来ていて、数年後に住むようになったグラスゴーとはかなり雰囲気が違っていた。さて、ここで私は何ができるのかを考えることが、最初の仕事だった。日本にいた時は自分の宣教は上から与えられてその場(共同体)に向かうのだが、ここでは着いてから自分で仕事を探さなければならなかった。幸い教会の中に親切な信徒がいて、一緒にネットでこの町の求人案内で仕事を探すのを手伝ってくれた。日本とスコットランドの宣教の違いを知らされた体験である。

まだ正式にはこの土地で働くことは許されていないので、もっぱらボランティアの仕事であった。一つはスコットランド教会経営のカフェでウエートレスの仕事。この町の人々と出会う良いチャンスだった。スコットランド教会とはカトリック教会ではなく、同じ神を信じているが別の宗派であり、カトリック教会はスコットランドではマイノリティの存在だ。人生で初めてのウエートレスという仕事を63歳でするとは夢にも思わなかった。しかし、スコットランド人と一緒に仕事をするうちに、お互い同じ神の子だという貴重な体験をさせてもらった。もう一つの仕事はチャリティーショップで古着などを売る仕事であった。古着といえどもかなり良い品が多く、私も幾つか手に入れた。初めてレジに立ったった時は心臓が爆発するかと思うくらいドキドキしていた。同じボランティアの仲間とも親しくなり宗派を超えての出会いもかなりあった。その他は教会の手伝いだったが、別の小教区にもギター持参で行って礼拝とテゼの祈りをしたり、片っ端から自分の持っているものを出し尽くして夢中に生きてきた。どこに行っても私の守護の天使はフィリピン人でいつでも助けてくれた。

そんな生活も2年間で終わり、管区内のコミュニケーションズの仕事が回って来て、エロンを後にしてグラスゴーという都市で広報の仕事を主にしていた。教会の手伝いをしながら、司祭の留守の時は集会祭儀をし、近所の老人訪問、ケアホームにいる信徒への聖体奉持などの仕事をした。9年間の英国、アイルランド、マルタ管区でのミッションに終止符を打って帰国し、この度日本管区で働くこととなった。短い9年間であったが、考えてもみなかった出会いと貴重な体験をさせていただいたことに感謝している。

 

                          (Sr.S.T)