マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本セクター

フランス「病院チャプレン」

私は、2018年1月に、パリ郊外にあるClichy-Sous-Bois共同体に派遣されました。ここで、使徒職を探している時に、教区から公立病院のチャプレンになるようにというお誘いを受け、共同体の同意を得て、病院での奉仕を始めました。

私たち病院チャプレン・チームは、司祭、4人のボランティア、そして私の6人で、病人訪問などの奉仕を行い、ボランティアは、週2日、私は2日半活動をしています。毎月1回、チーム皆で、ミサにあずかりますが、ミサ前に、少し時間をとって、教皇フランシスコの使徒的勧告「喜びに喜べ。現代世界における聖性」を読んで分かち合います。この共に過ごす時は、グループにとってとても大切な時で、私たちが教会の一部分であることに気づき、お互いの絆を深めるために、重要な役割を果たしています。ミサ後には、病院の食堂で共に昼食を取り、自分の家族や修道会のニュースを分かち合っています。

一人にしてもチームで行くにしても、訪問の前には病人のとの出会いを神に委ねる祈りをします。それから、産科、内科、救急、時にはICUなど、それぞれの科に分かれて行きます。皆、病人への奉仕ができることを喜んでいます。患者の中には孤独で、時には、訪問者は、私たちや病人のスタッフしかいないという人もいます。訪問の後、もう一度集まり、お互いにその日の体験を分かち合います。いつも入院患者の寂しさが心に残っています。ある日、別の病院のチャプレンから、ある患者を訪問してほしいという連絡が入りました。普段から、カトリック信者の患者の紹介などのために、他の病院のチャプレンとも連絡を取りあっているのです。その患者を訪問する前に、その人を訪問していいかどうか病棟スタッフに尋ねました。というのは、フランスの政教分離は厳しく、病棟スタッフの許可なしには、病人に出会うことはできないからです。その病院では、だいたいどの宗教であってもチャプレンの病人訪問は許されているようでした。しかし、私はそれを知らなかったので、まず、病院のカウンセラーに面接を申し込み、許可をもらいました。彼女は私に出会って喜んでくださり、私も同様でした。そして、私が訪問する予定の若い女性について説明してくださいました。その人は、未成年で妊娠しており、これまでに、肉体的、精神的、霊的、道徳的に、本当に多くの苦しみを体験してきた人です。

彼女のこれまでの苦しい体験を考え、また、カトリック信者である彼女の同伴は、カトリックのチャプレンがするのがよいと考えたようです。彼女は過去の体験を思い出して、泣きながら分かち合ってくれましたが、自分と同じ宗教の人に心を打ち明けられて、うれしそうな様子でした。病棟スタッフは、私の訪問を歓迎してくださり、その女性が会いたい時には、午前中でさえも、いつも訪問を許可してくれました。普通は、午前中は処置などがあり、訪問はできません。

患者の部屋に入る前に、この訪問の間主が共にいて下さるようにお祈りします。私は患者との面接がとても心配なことがよくあり、主に委ねて面接に臨みます。しかし、毎回、主が共にいてくださることを体験します。主ご自身が、面接の中で私が言うべきことを示してくださいます。私は彼女の話しに耳を傾け、その深い信仰を感じることができました。彼女は信仰から苦しみの中で生きる力を汲み取っているようでした。彼女の望みで、2回目は、神父様と共に訪問しました。神父様、ボランティア、そして私も、それぞれの立場で、彼女と親しくなって行きました。出産の日には、助産師の許可で私も分娩室に入り、友達が編んだ赤ちゃんの産着を持っていきました。

分娩は無事にすすみ、「エスペランサ」(希望)という女の赤ちゃんを出産しました。「彼女は私の希望です。この見知らぬ国で、彼女だけが私のたった一人の家族ですから」と嬉しそうに言っていました。この若い母親と一緒に、私たちは長い道のりを歩み、病院のスタッフ、助産師、カウンセラー、看護助手、ソーシャル・ワーカー、チャプレンなど多くの人々の支援を受けて、実を結ぶことができました。その後病院で長い間待ちましたが、若い母親と赤ちゃんは、福祉の家に入ることができました。昔のことを思い出し、また病院への感謝を込めて彼女は「今、故国を離れて2年がたちました。海を渡り、道なき道を歩き、3つの国で、生活のために働きながらここまで来ました」と語りました。小さな娘の将来に向かってこの若い母親は、精一杯生きようとしています。ある日、彼女が診察に病院に来て、チャペルで私に会いました。「彼女のたった一人の家族」である小さな娘を見せて、この子どもに洗礼を授けてほしいと言いました。彼女の家の近くの教会と連絡を取り、エスペランサの洗礼にこぎつけました。悲しいことに、このような状況に出会う移住者は、彼女一人ではありません。チャプレンになって9ヶ月たちますが、彼女は、苦しい背景を背負い、異文化の中で出産をした4人目の女性です。

病院チャプレンのミッションは、いわゆる「現代病」のために、存在するミッションと言ってもいいと思っています。この現代病は、内的な傷であり苦しみです。耳を傾け、共に時を過ごし、判断なしに理解すること、これらがこの病気の治療法です。福音書に見られる苦しむ人々や悪霊に苦しめられている人々に共感するイエスの姿が、私と共にあり、私の中で、様々な苦しみと出会うチャプレンのミッションに向かう力を与えて下さっています。このようなミッションに派遣され、病人や苦しむ人々の出会いを与えられていることに心から感謝しています。

 

Rasoamaharavogasy Julienne fmm