さわやかな朝、島から東京へ出掛けるために修道院からバス停まで歩きながら、今日は気持ちのいい日だ、と思いながら短いロザリオを唱えていました。
街の小さな店の前を通り過ぎようとした時、店から出てきた50代の男性に出会いました。「おはようございます。」「お花が綺麗に咲いていますね!」と挨拶しますと、その方が「何とか、なんとか・・・死にたい~」と唐突に言い出すではありませんか。私はびっくりしながら、はっきり聞こえなかったので「えっ、なんですか?」と尋ねると、「いろんなことで悩んでいるので、首を絞めて死んだほうがいいかな・・・」などと小さな声で話してくれました。
バスを待つ間、その方と少しだけ話しをしました。Kという名前とどんな仕事をしているかなど、少しだけ分かりました。簡単に教会への道順を教えて「また会いましょう!」と言いましたら、「よかった!お姉さんに会って!」などと言ってくれました。その時から、彼のことは私だけではなく、共同体のシスターたちの祈りの中に存在しています。何も出来ない私たちですので、神様にKさんのことを委ねました。
そんなことがあった日から一ヵ月が過ぎたある日、酒に酔っている様子でKさんが修道院に訪ねて来られました。ビール十本を飲んで、勇気を出してやって来たと言うことです。
「・・・すみません、こんなに酔ぱらっているのに・・・自分の恥ずかしいことを言えるかな~。」
私はその時、修道院を留守にしていたのでシスターたちが対応してくれました。
また、その一週間後、Kさんは元気な様子で修道院に訪ねて来られ、先週酔っ払っていたことを謝った後、今回は落ち着いた様子でゆっくりと話してくれました。ご両親、兄弟が亡くなり、友達もいないので、自殺まで考えていたそうです。 Kさんは色々なことを話し終え、少しだけ笑顔を取り戻したかのように見えました。 Kさんが修道院を離れる時、マリア様の絵と短い
み言葉の本を差し上げました。少しずつ神様の光が彼の心に入り、自分の命を大事にしますように、と祈り続けています。
それからも、時折、街でKさんに出会うことがあります。「何とか仕事を続けています。また近いうちに教会に行きます。」と話してくれました。
(Sr. N.C)