2021年4月、リベリアへの3年間の短期派遣の話があり、「はい、喜んで」と答えたものの「はて、リベリアってどこにあるの?」という感じでした。
アメリカ合衆国で奴隷制度から解放された人々が新天地を求めて渡った西アフリカにある国で、1847年に独立した、かなり長い歴史のある国です。アメリカの養女と言われたほどアメリカ合衆国からの全面的な援助で国は発展したのですが、もともとそこに住んでいた10以上ある部族との争いは絶えず、長い二度の内戦で郵便局もなにもかも破壊され、現在は世界最貧国の一つとなってしまいました。
私が派遣されたサニクリという町は、首都モンロビアから車でゴムの木の林をいくつも通って6時間ほど行ったところにあり、60%位は原住民からなる町でした。人々はとても陽気で明るく、日曜日のミサは歌って踊って、延々と3時間近くかかります。
そこのFMMの共同体はインド人、韓国人と私の3人で、学校や女性への援助などそれぞれ仕事があり、私は80歳で帰国したシスターの後を継いで小さなクリニックで働き始めました。ほとんどの患者さんはマラリアか腸チフスにかかっていて、時折高血圧の方がきたりすると、薬品棚を探し回ってやっと降圧剤を見つけるという具合でした。私も初めてマラリアと腸チフスにかかりました。今はとても良い薬があるので、すぐに治療すれば3~5日で治るのですが、山奥に住んでいたり、土地の薬草に頼ったりして手遅れで亡くなる方も多いそうです。何故かてんかん発作も多く、水や火の中に飛び込んで大やけどを負って担ぎ込まれます。毎日、carbamazepine という薬を1錠服用していればコントロールができるので、出発前にOFMから頂いた寄付をもとに基金を作り、貧しい人にも行き渡るように充分な薬を確保できるようにしています。
サニクリの町から車で30分ほど山に入ったところには鉄が採れる鉱山があり、リベリア国唯一の鉄道(人のためではない)で、毎日夕方、鉄鉱石が港まで運ばれます。土地の人々の話では、ヨーロッパの国々が出資して鉱石を採掘し自国に運んでいるそうで、リベリアには鉱石を精錬する施設も技術も何もないので、安い採掘労賃だけが収入源だそうです。鉄鉱石を満載した長いトロッコ列車が通る時は、サニクリの町で警笛がなるのですが、私にはそれがなんとも悲しく響きました。
現在は体調を崩して帰国していますが、心は度々リベリアに飛んで行き、シスター達やクリニックの職員とWhatsAppで話し込んでいます。
(Sr.K.K)