数十年前には学校で先生として教え、病棟で看護師としてバリバリ働いていたシスターたちが、今は足腰の不自由さやじわじわと始まった物忘れとともに、介護の手に助けられて生活をしている。
最近、食事量が減ってしまった一人のシスターが入院した。食べられないのにはいろいろな原因が考えられる。消化器の病気。心臓、腎臓など生命維持に欠かせない器官の機能低下。運動量が減ったため食欲がわかない。高齢者に起こるうつ状態など。さまざまな可能性を一つずつ検査し、見分けていくため2週間がたった。
私が入院したら、「病名は何ですか?いつよくなるのですか?よくなりますよね?」と、毎日聞くに違いない。もしかしたら用意される病院食の堅さや味を嘆き、隣のベッドの人が立てる音にいらいらするかもしれない。しかし彼女は一切このような質問はしない。いつ訪ねても「元気ですよ。何もしないでこんな楽をさせてもらって」と、穏やかな口調で笑顔を見せてくれる。私も生きていれば、20年後、人の手を借りるようになったとき、彼女のように混ざりもののない笑顔、ふんわりとした温かい雰囲気を持っていたいものだ。
あるシスターのつくった川柳を思い出した。
「元気かと 声をかけると 普通だよ」
昨日も今日もOK、明日もOKよ。そんな手放しの肯定感を、体の芯にしっかり培っている人の姿が浮かんだ。
(文責:M.O)