韓国管区への派遣を受けて、日本を出発したのは2月でした。韓国の姉妹たちからあたたかく迎えられ、順調に新しい生活を始めました。韓国は、日本よりも先にコロナの感染者が急増したため外出規制が早くから出ました。 それで、2月と3月はほとんど外に出ることができませんでしたが、その間に一緒に住む50人近くの姉妹たちの名前を覚え、だんだん親しくなっていきました。3月下旬からは、語学学校のオンライン授業も始まりました。
充実した毎日を送っていた矢先、“その日”は突然やってきました。外出規制が少し緩和された日の翌日のことでした。その日の昼食時、それまでずっと一緒にいた50人近くのシスターたちが急に半分以下になりました。それぞれの仕事や用事で外出されたのですが、その時急激に「取り残された」気分になりました。実際には、取り残されたわけでなく、「明日、外出するけど一緒に行きませんか?」と誘ってくれた姉妹がいたのですが、他にしなければいけないことがあったので、行かないことに決めたのは私でした。
自分で行かないことに決めたのに、この気分は一体何だろう…急激に降下していく気持ちを抱えながら急いで聖堂へ行きました。何と祈っていいのかもわからず、ただ座っていました。すると、姉妹たちが仕事や活動を始めたのに対し、これといってたいしたこともできない自分に焦っていることにまず気づきました。また、宣教者として派遣されてきたのに、コロナのために外部の人に会う機会がほとんどない状況や、話したいことや聞きたいことはたくさんあるのにまだ十分でない語学力、迷惑をかけたくないのに誰かに助けてもらうしかない不甲斐なさ、あたたかく迎えられていても時には感じる孤独感・・・等々に葛藤を感じていることに気づきました。
すべてを包み隠さず主に話し、最後に出て来た言葉は、「 전 외로워요….(私は寂しいです…。)」でした。言葉が出てきて初めて「私は寂しいんだ!」と気づき自分でも驚きました。家族や友達や日本が恋しいわけではないのです。ただ、新しい環境に根を下ろし始めた自分が、急に頼りない存在に感じられ、心細くなったのでした。勉強で疲れていたのも大きく影響したと思います。「主よ、寂しいので助けてください。胸が苦しいです。心の嵐を静めてください。一緒にいてくださることを感じさせてください。」と祈りました。
次の日、同じ祈りを繰返したあと、部屋に戻るとノックが聞こえました。誰かが、近くの部屋の姉妹を訪ねて来ているのだろうと思い、「いいな~。」と独り言。しばらくしてもノックが鳴りやまず、どうやら私の部屋をノックしているようだと気づきました。ドアを開けてみると、年齢の近い姉妹が立っていて「何回もノックしたんですよ。聞こえなかったですか。Sr.Oと名前も呼んでいたんですよ。」と笑いながらおっしゃいました。その姉妹の顔を見ると、急に安心した気持ちになり「私、寂しくて、気分が落ち込んでいて、しんどくて…」と打ち明けました。話しながら涙が出てきました。それを聞いたその姉妹は、「もし良ければ一緒に出かけませんか?自然の中を私と一緒に歩くのはどうですか?私が通っている学校も案内できますよ。」と言ってくれました。エマオへの道を主と共に話しながら歩いた弟子たちのように、私もその姉妹に今の状態を説明しながら歩いていると、不思議と気持ちが落ち着いてきました。
その日帰ってから、他の姉妹たちにも「今、気分が落ち込んでいて、寂しいんです。」と言ってみました。皆さん、私がそんな状態になっているとは知らず驚いていました。「心配しないでも、すごく良くやっているよ。」とほめてくれる姉妹、「Sr.Oが日本から来てくれて、皆喜んでいるんだよ。皆だよ!」と元気づけてくれる姉妹もいました。ある姉妹は「一緒に散歩に行こう。」と誘ってくれ、ある姉妹は食事のたびごとに一緒のテーブルに座って話をしてくれ、ある姉妹はご自分が外国に派遣された時に経験したことを分かち合ってくれました。「勉強の時に食べたらいいよ。甘い物を食べると元気が出るよ。」とお菓子をくれる姉妹、「Sr.Oが寂しいらしい。」と聞いて、わざわざ他の修道院から訪ねて来てくれる姉妹もいました。
ある姉妹たちは今経験している難しさや苦労を分かち合ってくれました。姉妹たちの分かち合いを聞いていると、「私は一人ではないのだ。この姉妹たちと支え合い、励まし合いながら主に従うように呼ばれているのだ。主がこの姉妹たちを私にくださったのだ。」と感じました。そう感じた時、不思議と嵐が静まり再び平和が訪れました。主は確かに嵐を静め、この姉妹たちを通して、共にいてくださることを感じさせてくださいました。この経験を通して、私は主と姉妹たちへの信頼を深め、下ろし始めた根も少し力強い根になったのではないかと感じています。
幸い私が通っている語学学校は、5月から学校での授業が始まりました。道行く人に挨拶をし、クラスメートたちと一緒に新しい言葉を学びながら、共に生きる喜びを伝える者になりたいと思っています。
(Sr.C.O)