10月の終わり頃「鮭が産卵のために太田川に上ってきている」と聞き、連れて行ってもらった。南相馬市の旧「立ち入り禁止区域」(福島第一原子力発電所から北20キロ)の少し外のあたり。海から2キロくらいのところだった。
川底の小石が一つひとつ見えるほどの透き通った水の中を、体長が1メートルもあるような大きな鮭が群れを成して泳いでいる。オスがメスを産卵の場所に誘導し、メスは産卵を終えると体が白くなって死んでしまうのだそうだ。生きているものの勢いの良さと、命を伝えきったものの動かない様が本当に対照的だ。自分の産んだ卵が育ち、大きくなってゆくのを見届けることもできない親魚が息絶え絶えになってゆくのを見ているのは切ない。が、同時に命をつないでゆく気高さにも心を打たれる。
人間たちが放射線量を気にしている地域でも、こうして生き物は果敢に命をつないでいる。生き物は放射線の影響を受けているのか、いないのか。生き物が川の流れに逆らって上り、命をかけて命をつなぐひたすらさに大きな励ましを感じずにはいられない。(Sr. K.O)