魚を買いに行った。昔ながらの市場である。
さばいてもらっていると 店主曰く、
「今日のは脂がのっておいしいよ」
「おたくはお魚が新鮮だときいて来たのですよ」と私。
「これは絶対がっかりさせないから。」と主(あるじ)は満足げに言う。
その包丁さばきの美しさに私は しばし見とれていた。
ふとガラスケースの方を見ると「メヒカリ 100g ○○円」という札が目に入った。
「え、メヒカリ!!」と私は思わず叫んだ。
(注 メヒカリとは福島県いわき市の市魚で 眼球が青く光っているところから
この名前で呼ばれている。)
「知ってるの?」と主人。「去年 南相馬にいたの」
私はまるで旧知の友人(?)に再会したかの思いで嬉しくてたまらない。
とはいえ実物にお目にかかるのは今日がはじめてである。
「どうやって食べるの」
「揚げるのが一番いいね。干してから焼いてもいいよ」と言いながら
主人もご機嫌である。大根のケンをひとつ余計に私の袋に押しいれてくれた。
関東に来て 被災地との温度差に寂しく思っていた私は
メヒカリがここに並んでいることだけで 「福島ここにあり!」と
胸をはっているように感じられて 俄然元気がでてきた。心が踊った。
メヒカリとはいい名だ。 そのごとく福島が光となって立ち上がって行くのを
祈りながら足取りも軽く私はバスに乗り込んだ。
「立ち上がれ、光を放て。まことにお前の光がやってくる。
闇が地を、暗黒が諸国の民をおおうが
お前のうえには主が輝き上り その栄光がお前の上に現れる。」
(イザヤ書 60:1-2) (Sr.S)