9月22日にNHKが南相馬を舞台にした「放射能汚染からの農業再生」という番組を放映した。その中で、分子生物学者の河田昌東(まさはる)先生のご指導のもと、有機農家で「なたねの研究」をしておられる杉内清繁さんがなさったことの報告をしておられたのだが、なたねにはセシウムがついていても、油を抽出してみると、そこには放射能がついてきていないので、食用になるという。抽出した油をさらにコーヒーを沸かす時のような要領で、丁寧にろ紙を3枚重ねにして2度ろ過すると、不純物が取り除かれて、透き通った輝くような「菜種油」ができるという。私は感動した。私だったら、種が放射能に汚染されていると分かったら、その時点でがっかりして、油を抽出してみることなど考えもしないだろうな、と。そして、ローマ人への手紙の5章にある「苦難は忍耐を生み、忍耐は試練に磨かれた徳を生み、その徳は希望を生みだすことを知っています」というみことばを思い出した。河田先生は「正しい事実を知る。そして自分にとって不利なことも受け入れる力をもってこそ困難を打開できる」と結んでおられた。放射能のついた種に出会うという困難に直面しても、忍耐して研究を先に進めることができるのは、「何とかしたい」「何とかなる」という希望に向かってこそありうることだとも思った。
「卵が先か、ニワトリが先か」、という議論があるように、「希望が先か、忍耐が先か」。 いずれにしても、希望の実現までには時間がかかることが多い。忍耐はうずくまって、辛い時をやり過ごすことではなく、希望の実現に向けて歩み続けることなのだと気付かされた。
農業の再生は菜種やヒマワリから始まるだろうか。