盲導犬ロゼールに導かれて、9・11から生還を果たしたマイケル・ヒングソン氏の講演を、私はたまたま聞くことが出来た。彼はその日ニューヨークの世界貿易センタービルの78階に盲導犬ロゼールと共にいた。強い衝撃を受けてビルが折れるかと思ったが、暫くしてビルは元通りまっすぐに戻った。彼はもうもうとした煙や、隣のビルで紙が燃えるきな臭い匂いなどを感じたが、何が起こったのか分からなかった。しかしロゼールがびくともせず、「大丈夫、安全に出ることができる」と伝えてくれていた。
そして、やがてロゼールに導かれて78階から非常階段を一段一段降り始めた。大勢の人が一緒に降りていた。時に疲れと不安で皆黙り込んで重い雰囲気になることもあり、そんな時、彼は冗談を飛ばしながら降り続けた。1463段を1時間半かかって降りきり、生還を果たしたという。
全盲の人が、この非常事態に、落ち着いてこの大仕事を果たせたことが驚きだ。また、盲導犬にこれだけ大きなことができるのも驚きだ。彼は普段からロゼールとの信頼関係があったからできたという。飼い主が自分の盲導犬を信頼することで、犬に備わっている能力が最大限に発揮されたのだろうか。「奇跡」と思えることが、信頼を通して行われるのだと、あらためて深い思いにとらえられた。
盲導犬に導かれて生還!
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