日本と同じ管区の中国で起きた７名の殉教
1900年 (明治33年) は、日本の共同体にとって待労院新築の「奇跡的な」実現により希望に満ちた新世紀のはじまりとなりましたが、同じ管区に属する中国の共同体では新世紀の過酷な幕開けとなっていました
。その発端はこの国で6月に起きた義和団事件にありました。事件2か月後の9月、創立者のもとに次のような電報が入りました。「ペトリチではイエズス会宣教師３名、山西省北部でイタリア人司教２名と宣教師１名、フランス人フランシスコ会士のバレ神父とヨ－ロッパ人修道女７名、プロテスタント牧師数名の虐殺が報道されている。当地の統治者が自分の館の庭で目の前で斬首させたことは確実である。」と。創立者は、9月29日付の回状で、7月9日にタイヤンフ－でパスカル修道院のマリ・ヘルミン・ド・ジェズ院長と6名の同志が殉教したことを全会員に知らせました。日本の共同体は、訪問中の管区長から直接この話を聴き、この姉妹たちが神と人々のために愛の殉教を遂げたことを誇りに思い、その生き方に大きな刺激を受けました。
不可解な靄に包まれていた殉教とその後の動き
1900年の12月に管区長が日本訪問を終えて中国へ戻ると、長い間 完全な沈黙を守り続けていたタイヤンフ－に新しい動きが見られました｡中国の統治者が、ヨ－ロッパ諸国から軍隊を送ると脅されて、殺戮後めちゃめちゃに投げ込んだ犠牲者の遺骨を墓穴から掘り出す作業にようやく着手したのです。
宣教師がこの地方の信者たちに再会できたのは殉教一年後のことでした。信者たちは、人々の苦しみ、嘆き､貧しさ､飢え乾きを癒してくれたこの聖なる殉教者たちのことが忘れられず、「この思い出の地にシスタ－たちを再び派遣してほしい」と涙ながらに宣教師たちに懇願していたので、宣教師は再開を要請する手紙を創立者に送りました｡それには「そこに住んでいたシスタ－たちは 勇敢にも 死に赴く前に テ・デウムを歌いました｡どうか 同じ器をもった修道女たちを送ってください」と書かれていました。
こうして、タイヤンフ－のミッションが廃墟の中から急速に立ち上がる必要に迫られ、創立者は、パスカル修道院再建のために会員派遣の準備を進める一方、殉教者の遺物を探しに出かけた管区長から送られてくる殉教者の手記や手紙などの遺物をもとに伝記を書き始めました。この伝記は1902年1月に完成し、5月には最初のグル－プが派遣されました。7月8日、このシスタ－たちは殉教地で行われた償いの儀式に管区長とともに参列し、宣教師の捧げるミサで信者と一緒に熱烈な祈りを捧げることができました｡ 棺に納められていた7名の殉教者の遺体は 2名の司教と3名のフランシスコ会士の棺とともに 12の墓に葬られ、12の十字架が建てられていました。
1886年 (明治19年) に創立者が初めて中国のミッションに会員を派遣して以来、飢餓、伝染病、暴徒による迫害と強制追放などが国の至る所で絶えず起こっており、会員の中からも多くの犠牲者が出ていました。それは、管区長のマドレヌ・ド・パジが常に体験してきた最も重い十字架であり、 神の望みを果たすために殉教に熱い思いを抱いていた宣教女たちの誇りでもありました。創立者も、相変わらず苦難続きの中国で働く会員たちに 絶えず励ましの手紙を送っていました。「あなた方が遭遇している試練を読んで 私の心は 血に染まり 涙ぐむばかりです。どうぞ 勇気を出してください。あなた方の十字架が生き生きとした実を結ぶ日がいつか必ず来るでしょう」と。管区長と宣教女たちは、この言葉に励まされ、試練の渦中にあっても宣教への熱意に動かされて前進し続けました。「神の恵みのおかげで、どんなことが起きても何もなかったかのように、いつものように生活を続けていくことができました｡ 毎日 祈り､働き､顕示された聖体を礼拝しています」と。
その言葉通り、早くも1903年 (明治36年) に 最初のグル－プがタイヤンフ－の殉教者たちが始めた使徒職を再現させることができました｡中国政府がイタリアやフランスなど欧州諸国から公の償いを課せられて殉教地に立てた償いの記念碑除幕式に続いて 殉教者の命日には荘厳な追悼ミサが行われ、平和が再びこの地に訪れたからでした。管区長は、土地の司教や司祭の要望に応えつつ 1902年 (明治35年) には 中国大陸での新しい足場となるチンタオ（青島）とチュンキン（重慶）に修道院を創設し、1903年 (明治36年) には修道院を5か所に新設しました。コ－ル師から創立者のもとに久留米と人吉に修道院創設の要請があったのもこの年でした。
中国で殉教した７名の会員
殉教の知らせをうけて 創立者は 聖フランシスコと共に こう言いました
「今こそ 私には真のマリアの宣教者フランシスコ修道会の会員が７人います」