マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本セクター

アイルランド滞在記(アシッジ在住の姉妹より)

こんにちは。私は、イタリアのアッシジという町にある共同体に住んでいます。シシリー島から再度この町に派遣され、7年が過ぎようとしています。 ここはアッシジの聖フランシスコが生まれ育ち、そして帰天した町として知られています。 私たちはここで巡礼者の受け入れの活動をしています。オリンピック村のように国際色豊かな宿泊客が集まってくるため、イタリア語以外に、英語、仏語、スペイン語など、もう一つ別の言葉を話すことができたらなぁと常々思っていました。 そこで、読み書きはできても、話すことと聞き取ることが苦手な英語の上達を夢見て、数年前、英語圏の共同体に一年間住むことを長上に願い出ました。 その時は快諾されたのに、手続きの問題や健康面で支障が生まれ、結局滞在は一か月半(!)でしたが、去年の11月アイルランドのFMM共同体に行ってきました。

通常は語学学校に通うよう言われるのですが、私はその意志は全くなく、共同生活の中で学びたいと申し出、英語の個人授業のほか、いくつかの活動に参加させてもらいました。 アイルランド(リムリック市)の姉妹たちとは初顔合わせでしたが、同じカリスマに生きる者同士、すぐに打ち解け、共通の知り合いを見つけ出しては、思い出話に花を咲かせました。 街の教会のオルガン奏の奉仕もさせてもらいました。言葉が不自由でも、同じ音楽を仲間と奏でることはできます。 アイリッシュハープやギターと毎週合奏をしました。手前味噌ですが、呼吸もぴったり合っていました。

もう一つ、楽しかった活動がありました。それは”CHRISTMAS Shoe BOX”という活動です。『クリスマスの靴箱』。アイルランドにあるTEAM HOPE という慈善団体が主催しています。 共同体の一人のシスターに連れられて行った大きな倉庫にはたくさんのカラフルな箱が山積みされていて、様々なものが棚に並び、数十人の老若男女が箱に物を詰めています。アイルランド中の公立学校が参加している慈善活動で、出荷先は主に東ヨーロッパ、アフリカの国々にあるカトリック教会ということです。 まず、家にある空の靴箱に親子の共同作業できれいな紙を張り、プレゼント用の箱に仕立てます。 それとは別に物品リストがあり、それぞれの家庭ができる範囲でリストに沿って箱の中に物を入れていきます。寄付という形をとることもできますが、なるべく親子で買い物に出かけリストにある品を集めます。

その際、例えば「2~4歳女の子用」など、選ぶことができます。 それをもらう子供を想像しつつ、親子であれこれ考えて品物を集めていきます。箱に詰め終えたら、箱に張られたシールの2~4歳女の子用という欄にチェックを入れます。 そうやって各家庭から寄せられたクリスマスプレゼント用の靴箱の中身を広げ、不足分とお菓子を足して封をするのが、その日集められた私たちボランティアの役目です。 そうやって数日間かけて数千個のクリスマスプレゼントの箱が積み上げられ、コンテナに入れられ、その年に決まった送り先の国へと運ばれて行きます。箱を開ける私にも、詰めた人の思いが込められている中身を見て心に感じるものがありました。 スカスカの箱もまたそれはそれで、余裕のない生活の中でもこれとこれだけは差し出したいという思いを見たようで、胸が熱くなりました。いいのです、こういうのもまた気負いがなく正直で。 もちろん全ての箱は匿名です。

元学校の教師をしていたうちのシスターの一人が、どうやって箱を満たすのかと教室の子どもに尋ねると「もちろんママが買い物をして…」と答えたそうです。 「ママはこの箱とそういうふうに取り組むわけね、でも君はどうするの?」というと、しばらく考えて「僕はね、僕の真新しい消しゴムと鉛筆を入れるよ」と。 そうやって小さいころから他者と分け合う心を育てることもまた、愛ある未来の世界を作っていく上で素敵なステップだなぁと思いました。

肝心の英語は目標に遠く及びませんでしたけれど、本会の別の国の姉妹たちの愛情を感じ、世話を受け、新しい体験をし、新たな気持ちで今またアッシジの生活を続けています。振り返ってみると、どこもかしこも神様のみ手に包まれた、優しいアイルランド滞在でした。

(Sr. A.T)