マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本セクター

神さまのプレゼント

神さまが私に与えてくださった環境は、滋賀県と福井県の県境で、峠を越えて京都に通じる山間の村です。海抜100mの熊川宿(鯖街道)の並びの家で祖父母、父母、姉弟5人の長女として84年前に生まれました。街並みに添って流れる一級河川の北川は、村の子供たちの夏の遊び場でした。祖母は北川にかかる長い欄干の上から、いつも黒い紙製の日傘をさして、泳いでいる孫たちの監視をしていました。澄み切った空気、北川の清流、緑の山そして仲の良い村人とともに生きてきました。5人の子供は自分の意地を通す強いものを持っていましたが、父は全く自由に扱ってくれました。

2年前に傘寿を迎えた弟が、この山里での山の幸、川の幸、学び、遊び、営みについて同じ世代を生きたみんなの想い出を散文にして私に送ってきました。うなずきながら読んでいく中で、私の全く思い当たらない文章に出合いました。「思いやり」と題された一文で、弟の同級生が死に、弟が死にたいくらいつらい思いをしていた40日間、親と兄が黙って彼を守り、支えてくれたことを書いていました。私は高2でしたが知らされませんでした。今思えば、弟のつらい思いを40日間一緒に耐えていたかったと思います。弟は退職したのち、高槻の日赤病院のホスピス病棟で車いす移動のボランティアをしていましたが、コロナのため中止になり、現在地域で傾聴ボランティアをしています。私も自由に生家を飛び出し宣教者の召命をいただき50数年が過ぎました。

父は1ヶ月ほど入院し94歳で他界しました。私は見舞いに行き「洗礼を受けようか」と言ったら「そんなものはいらん」と。私の召命のためここは引けぬと思い「私は生涯キリスト様を信じて生きてきたんだけど。お父さんどうですか。」と言ったら「うん」と承知してくれました。

9人家族全員に洗礼の恵みをいただきました。神さまからのプレゼントです。

(Sr. S.I.)