マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本セクター

人吉修道院

美しい山、清らかな水、人も良し、球磨川の流れが澄み透る町、人吉にマリアの宣教者フランシスコ修道会が派遣されて今年で109年になります。 熊本でのライ病者の救済をマリアの宣教者フランシスコ修道会に要請されたパリーミッション会のマリー・コール神父が、熊本から更に南に離れた人吉にも、貧しさのために治療も受けずに死んでいく人々が大勢いることに心を痛め、援助と魂の救いのために会員の派遣を再び会長に願われたことから、人吉修道院の歴史が始まりました。『行きなさい。日本の国でイエスが人々から愛されるようにしてください。人々に善を行うため、最初から土地の言葉を学び、日本人のように生活するように努めなさい。』と言う修道会の創立者シスターマリー・ド・ラ・パシオンの願い通り、彼女たちは日本の文化に敬意をもって溶け込み、病人の看護、生活の糧のために開拓、牧畜などで献身的に働くことになるのです。hitoyosi

1906年(明治39年)1月、日本の管区長であったシスターマリ・ド・パジが6人のシスターを同伴し熊本を出発しますが、当時の交通事情はとても不便で、汽車・船・牛車・馬車を使い、徒歩で山を越え、球磨川の急流を再び船で、真冬の厳しい寒さの中を一泊二日の命がけの旅をしたのでした。(現在は高速自動車道で23のトンネルを通って簡単に行くことが出来ます) 待っていた人吉のカトリック教会の信者に迎えられ、教会の傍にある小さな古い木造の仮住まいの家に入って、祈りの場所を準備し、教会の主任司祭であったブルゲ神父によって、到着2日目には聖体賛美の式が始めて行われました。小さな町に始めて聖体の主イエスが礼拝され、主の傍らで神の栄光と人々の救いのために祈る共同体が誕生し、神に感謝を捧げたのです。 2ヵ月後には、復生院の名で施療院が開かれ、貧しい人々を無料で診療し、毎日、大勢の患者が訪れました。幼児教育の大切さと一般家庭に福音を伝える必要を重視していた地元の人々の要請に応えて、1915年には人吉幼稚園が創設されました。卒園生の数は7千人を超えていると思います。さらに乳児を一時期収容したことから孤児、貧しい家庭の子どもたちを養育する施設が始まり、1948年に認可を受けて、養護施設聖心愛児園が生まれました。同じ年に復生院で老人の世話をしたことが発端となって、1952年には聖心老人ホームが開設されました。長い年月の間に修道院は改築され、社会福祉事業、教育事業に、或いは広い土地での開拓畜産などにも汗を流しました。しかし時代の変還と共に、復生院、授産施設、聖心愛児園などは、1968年に閉鎖され、老人ホームは社会福祉法人仁和会に譲渡され、長く続いた幼稚園も信者の方に担当していただくようになりました。現在、シスターたちはそれぞれ新しくなった宣教の場所で、職員、ボランティアまた、利用者として関わりを持ってすごしています。

カード製作中

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今、修道院には70代〜90代のシスターが10人で住んでおり、お互いに支えあい、祈りによる宣教を大切にして、関わったすべての人、教皇様・司教様方・すべての司祭のため、世界平和のため、召命のため・・・と、祈る毎日です。特に、人吉教会の数少ない信者の子どもたちのためには、名指しで祈っています。

訪れてくださる方々と共に

訪れてくださる方々と共に

外に出ての宣教が出来ませんが、人吉教会では、第一日曜日の朗読と共同祈願を担当し、修道院の聖堂で、第一土曜日の1時から聖体の礼拝を信者さんとともにおこなっています。また、修道院を訪れてくださる人々をキリストのお客様をお迎えする心で大切にしています。その中には、人吉の施設で関わっていたかつての子どもたちもおり、時々来てくれます。直接関わったシスターは天国に逝ってしまいましたが、彼女達には関係ないらしく、どのシスターも『母様』と慕って実家のように遊びに来て色々話をしていきます。そのかつての子どもからいただいたお手紙(抜粋)を紹介したいと思います。

主の平和 母様方への感謝と、亡くなられた母様方のため、いつもお祈りさせていただいております。(中略)  親孝行するのに、母様方のご希望は何だろうか? どうすればお喜びになるだろうか? と、何時も考えています。きっと、自分の居る場所で得意分野で、まわりの皆さんと仲良く、平和の輪が広がって行くように働くことだと思っています!!  (中略)  母様方が教えてくださいました。「ごミサはね、神様が一番お喜びになるおいのりですよ」それで、ごミサには喜んで参加しています。うちの子どもたちにも、一緒にお茶を飲んでいるときなど、いつの間にか母様方のお言葉を伝えています。皆、ごミサを義務と思っているのかな? 辛いのかな? 上手く言えると良いけれど「母様が教えてくださったよ」と言っています。色々なことを沢山教えていただいたので、そのまま伝えています。本当に『母様方の御力は偉大』です。生活の中からの実感で、いつもありがたく思っています。私たちは、「神様を愛する」「人を愛する」「お互いにゆるし合う」「謙遜な心」この大切な宝物がなければ生きていけないと思います。  (中略)

私たちはなかなか言うことを聞かないで困らせました。(私たちは、甘えてばかりいたのですね)それなのに、「うちの子」と可愛がってくださって、「祈りながら育てて下さった」のですね。大切に育てていただき、本当にありがとうございました。もしも、母様方に助けてもらわなかったとしたら、私たちは、とんでもない人間になっていたはずで、私たちは、実は「マリア様に育てていただいた」のですね。目に見えないことですが、大人になってからやっと気付きました。マリア様、母様方、本当にありがとうございました。車で人吉を通過する度に、「フランシスケン、万歳!」といっています。母様方は『世の中を支える縁の下の力持ち』です。どうかお体を大切にお過ごしください。院長様と母様方にくれぐれもよろしくお伝え下さいませ。」

このお手紙を読むたびに、苦労のうちに事業を始められた先輩シスターの心を、祈りで引継いでいくことが私達人吉修道院の使命だと思っています。 最後になりましたが、人吉幼稚園が今年創立百年を迎えます。秋には記念式典が行われる予定で、私たちは心をこめて特別に祈ることで準備をしているところです。 山よし、水よし、人よしの美しい地で、創立者が日本への最初の派遣に際して励まされたように、貧しさも苦しみも神の援けによって勇気付けられ、『質朴、平和、喜びのうちに福音を生きます』という会の精神を心にとめて、人吉のカトリック教会共同体の一員として、また、人吉市民の一人として、多くの人に愛されるよう願って生活しています。

人吉4

祈りをこめて…