マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本セクター

FMM日本管区の歩み-67

本会の受諾と契約書の認可

本会が「横浜一般病院」から要請を受けた1935年(昭和10年)の横浜は、東京大司教区のシャンボン大司教の指導下にありました。この要請についてM.ピエ-ルから相談を受けたシャンボン大司教は、産業貿易や商業の分野で発展している横浜には沢山のヨ-ロッパ人が住んでいるので、この人たちの霊的善のためにも、財政的に苦しい管区のためにも、この要請に応じるように管区長を励ましました。こうして、7月の管区評議会の席で会長と本部評議会の基本的な同意が伝えられ、本会を代表してメリ・オブ・ジザスが横浜一般病院との話し合いを継続していくことになりました。両者間で幾度も話し合った結果、病院側が提出した次の条件が取り上げられました。

1.1935年9月か10月から看護部門の責任と病院の内部管理をマリアの宣教者フランシスコ修道会に委託する。                                   2.修道女3名の派遣:英語を話す看護婦有資格者の外国人修道女2名、病院内管理(台所、買い物、会計)のできる日本人修道女を1名求む。                     3. ヨ-ロッパから派遣されてくる修道女の旅費は委員会が支払う。           4.病院の建物は1923年の関東大震災で崩壊したため、現在は1925年に建てた臨時の建物の1階だけを使用している。入院患者は平均 10名くらい。近いうちに山手地区に新築予定。    5.修道女の仮住まいは病院敷地内にある家の1階。2階は日本人従業員の宿舎。     6.レントゲン室に勤めているドイツ人女性を解雇しない。               7.12項目から成る「契約書」の最初の契約期間を3年とする。

管区長から通知を受けた会長は、基本的にこの呼びかけに応じることに賛成し、会員の霊的生活のために司祭の派遣が保障されると、直ちに英語を話す有資格者の会員2名をヨ-ロッパから送り出しましたが、契約書の医療と看護に関する項目の中に、倫理上問題となる点があることにも気づいていました。看護婦の資格を有していた会長のM.マルグリットにとって、看護修道女の職務領域が教会法で許されている範囲内のものかどうかを明確にする必要が生じたのです。いわゆる堕胎や不妊手術の問題は「教会法というよりも、自然法によって妥協は決して許されない」と考えていた会長は、日本にいるシャンボン大司教の意見を求める一方で、ロ-マにいる専門家のイエズス会司祭の助言を受けながら慎重に調査を進めていきました。これは非常に困難な作業でしたから、ロ-マと日本の間で幾つもの交信が飛び交い、合意にいたるまで3か月もの長い時間を要しました。

既に日本へ向けて出発していた2名は上海に到着し、そこで最後の決定を待っていました。 管区長は12月3日までに返答しなければならず、気が気ではありませんでした。遂に期限切れ1日前の12月2日付の手紙が会長の返事を運んできたのです。会長は「人間には絶対に許されない手術に、姉妹たちは直接的にも間接的にも協力しないこと」を契約書に明記し「医師と患者に私たちの考えを説明するように努めること」を条件に契約を認めました。こうして12月28日、横浜一般病院と本会との間に一回目の契約が結ばれました。