前回の投稿では、ボリビアの豊かな自然について紹介がありました。ピラニア?ピンクイルカ?と、遠きアマゾンに思いを馳せているうちに、そういえば私も、数か月前まで滞在していたフランス・ブルターニュ地方で、ある生き物を探しに敷地内にある池まで毎晩出かけていたことを思い出しました。その生き物とは、ヌートリア。フランス語ではラゴンダン(ragondin)と言います。ヨーロッパの夏は日が長く、私たちの修道院を囲む広大なシャトレの森に住むラゴンダン一家は、日の沈む少し前に池に現れます。散歩仲間のマダガスカル人姉妹と私は、ラゴンダンを一目見ようと毎夜、池まで散歩に出かけていました。この池とそこにかかる橋は、会が創立された当時も今も、同じ場所にあります。
そしてある夜、私たち二人はとうとう、池の片隅で3匹のラゴンダンを発見!池まで根をはった大きな木の下にある洞穴を出入りするラゴンダン一家を近くでみようと急いで対岸まで走りましたが、惜しくもその頃ラゴンダンはすでに池の中央に向かってゆうゆうと泳ぎ始めていました。カメラを向けた時には彼らはすでに水面下。残念ながらその姿を捉えることはできませんでした。そこに残るは泳跡のみ…。辺りが暗くなっていき水鳥たちもいなくなった静かな池を、時々水の上に姿を現しながら縦横無尽に泳ぎ回るその姿は、本来、微笑ましいものです。ですが、私たちがそれを複雑な思いで眺めていたのは、ラゴンダンがフランスでも駆除対象の外来生物だからです。
Wikipediaによると、ラゴンダン(ヌートリア)はもともと南アメリカ、特にパラグアイ、ウルグアイ、ボリビア、アルゼンチン、チリなどに分布していたそうです。フランスには19世紀に輸入され、毛皮目的に捕獲・取引されていた時代もありましたが、現代ではその繁殖力の強さから生態系や人間の住環境への影響が懸念され、侵略的外来種に指定されています。日本でも特定外来生物として法律上の駆除対象になっています。
植物や動物が人間の都合によって乱獲されたり様々な場所に持ち込まれたりした結果、傷ついてしまった生態系。奇しくも前回の投稿につながる内容となりましたが、その傷を回復していくために、すべての被造物にとって持続可能な暮らしと生態系を目指す取り組みが実現していくよう願っています。
(Sr.To.H)